<相続登記>遺産分割協議書を作成した相続人が死亡して印鑑証明書の提出ができないときは

· 相続手続き

先日、「両親が亡くなって、子がふたり(兄弟・姉妹)で遺産分割協議書を作成するときはどうしたらよいのですか?」というご質問を受ける機会が多かったことを受けて、遺産分割協議書の雛形の例をご案内しました。

そんな前回の記事は こちら をご覧ください。

 

本日は、前提は同じ(次の1から5のとおりです)で、お父さんが亡くなってしばらくして、相続人の3人(お母さんと子2人)で、「お母さんが1人で不動産を相続しよう」という話をし、遺産分割協議書を作成していたとしたらどうでしょうか?について解説します。

【前提】

  1. お父さん名義の不動産がある
  2. お父さんが十数年前に亡くなったけれど、名義はそのままだった
  3. お父さんの相続人は、妻であるお母さん・子である姉と妹(2人)の3人だった
  4. お母さんも数年前に亡くなった
  5. お母さんの相続人は、子である姉と妹の2人

 

この場合は、次のような遺産分割協議書(昔に作成していた遺産分割協議書)と一緒に、「証明書」(※遺産分割協議書に続けて例文を載せます)を提出することで、登記手続きを進めることができます。

 

 

遺産分割協議書

最後の本籍 山梨県中野原市●番地
最後の住所 東京都上央区晴山●丁目●番●号
被相続人  うさ山たぬ樹(平成●年●月●日死亡)←お父さんのことをかきます

 被相続人うさ山たぬ樹の相続人、うさ山ね子(※お母さん)、A(姉)、B(妹)は、被相続人うさ山たぬ樹の遺産につき、分割協議を行い、次のとおり合意した。

第1条(対象となる遺産の確認)
 本協議者の全ては、別紙遺産目録(以下「目録」という。)記載の各財産が被相続人の遺産であることを確認する。

第2条(遺産を取得する者)
うさ山ね子は、目録記載の全ての遺産を取得する。

 

第3条(遺産分割の実行)
 本協議者の全ては、目録記載の不動産の登記手続きの申請、預金の解約その他の手続に協力する。

第4条(新たな遺産が発見された場合の処理)
 本協議書締結後、目録記載の財産以外の被相続人の遺産が発見された場合、当該遺産はうさ山ね子が全て取得する。

 本協議の成立を証するため、本書1通を作成し、全員が署名捺印の上、原本をうさ山ね子が保有し、A及びBは写しを保有するものとする。

  平成25年7月30日

                            住所 東京都上央区晴山●丁目●番●号  

      相続人     うさ山ね子  実印

 住所 東京都上央区晴山●丁目●番●号    
    相続人         A  実印

 住所 東京都谷渋区●町●丁目●番●号    
    相続人         B  実印

【対象遺産の表示】
(省略)

 

証 明 書

 

 被相続人うさ山たぬ樹(平成●年●月●日死亡)の遺産については、平成25年7月30日に別紙遺産分割協議書のとおり協議が成立しましたが、相続人うさ山ね子は令和●年●月●日に死亡したので、うさ山ね子の印鑑証明書を添付することができません。

 しかし、遺産分割協議が相続人の全てであるうさ山ね子、A、Bによってなされ、別紙が真正に作成されたことに相違ありません。

 

令和5年●月●日

 住所 東京都上央区晴山●丁目●番●号

        相続人うさ山ね子の相続人 A  実印

 

 住所 東京都谷渋区●町●丁目●番●号

        相続人うさ山ね子の相続人 B  実印

 

このような証明書をあわせて提出することになります。

さて、印鑑証明書は、誰のものを提出するのでしょうか?

そうですね!証明書の文中にもありますとおり、お母さんのものは提出できませんので、姉妹ABの印鑑証明書を提出することになります。

では、数年前のお父さんの遺産分割協議書・数年前に遺産分割協議があったことの証明書・姉妹ABの印鑑証明書がそろいました(ほかにも、お父さんの出生から死亡まで・お母さんの出生から死亡までの連続した戸籍、お父さん・お母さんの住民票の除票、評価証明書もそろっていることにしましょう。なお、お父さんの住民票の除票は要るケースと要らないケースにわかれます[解説はこちら])。

これで登記手続きを進めることにしますか?

 

 

専門家が関与した場合(しなくても同じかな、とは思いますが)、ほぼほぼ、まだ進めません。

お父さんの名義を、これまでにそろった書類をもって、姉妹ABがお母さんの相続人の立場で登記手続きの申請をして、お母さんの名義に変更することはできます。

でも、お母さんも亡くなっていますものね。

お母さんの遺産はどのように承継しますか?という話まで纏めて、お父さんの名義から姉妹(お母さんの相続人)の名義に一気に変えてしまうほうがよいと考えます。

これらのいずれであっても、一気に名義変更することができます。

  • お父さん→お母さん→A
  • お父さん→お母さん→B
  • お父さん→お母さん→AとB

提出が求められる書類は、お母さんの遺産に関する遺産分割協議書と、ABのうち財産を承継する人(2人なら2人)の住民票が増えることになります。そして、お母さんの名義にはしない(一度相続した人として名前が載るだけで住所は載らない)ことから、お母さんの住民票の除票(上で、そろっていることにしましょう!とした書類の一つです)は不要です。

 

 

この例題では、お父さんに続いて亡くなるお母さんがお父さんの遺産の承継人だったので、お母さんの遺産分割協議書も必要 となり、複雑でした。

一方で、お父さんの遺産の承継人を、当時3人で、Aと定めていたとしたら、どうでしょう。

この場合は、お母さんの遺産分割協議書は要りません。

お父さんの遺産分割協議書・数年前に遺産分割協議があったことの証明書・ABの印鑑証明書(ほかにも、お父さんの出生から死亡まで・お母さんの出生から死亡までの連続した戸籍、お父さんの住民票の除票、Aの住民票、評価証明書もそろっていることにしましょう。なお、お父さんの住民票の除票は要るケースと要らないケースにわかれます[解説はこちら]。)をもって、Aが相続する登記手続きができます。

 

次回は、

また前提は同じ(お父さんが十数年前に亡くなり、お母さんが数年前に亡くなったケースで、子が1人だった)とし、お父さんが亡くなってしばらくして、相続人の3人、お母さんと子で、「お母さんが1人で不動産を相続しよう」という話をしたけれど、遺産分割協議書を作成していなかったとしたらどうでしょう。

という例題について解説したいと思います。