相続登記の添付書類③「被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)」と裁判所を通じた手続きの関係<代替書類を求められないケースが多々あります>

· 不動産登記,相続手続き,裁判所の手続きが関わるお話,業務日誌

これまで、

を解説しましたが、

 

裁判所を通じた手続き、例えば遺産分割調停や審判を経ている場合で、遺産分割調停の調停調書、遺産分割審判の審判書などがあって、それに基づいて登記手続きをおこなうときには、どうでしょうか。

 

この場合は、「被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)」やその代替書類が提出されなくても、問題なく登記申請が受け付けられているようです。

裁判所の手続きの中で、被相続人と相続人がしっかりと特定されているだけでなく、対象不動産が被相続人の遺産であることが確認されているからでしょう。

 

※調停調書や審判書に「登記簿上の住所」がしっかりと記載されている必要があります。弁護士や司法書士が関わっていれば、間違いなく記載されていると思いますが、念の為、こちらもご確認ください。

 

私は、これまでに3回、調停調書や審判書に基づく登記手続きを経験しましたが、3回とも、①も②も提出せずに、問題なく手続きが完了しました。

 

ただ、管轄の法務局によっては、異なる判断がされていることもあるようです。

(そのように解説している専門家の記事に覚えがあります・・・)

手続きの前に、管轄法務局に問い合わせるのがよいかもしれません。

 

そして先日、また新たな登記手続きを経験しました。

 

調停調書や審判書に“基づく”登記手続きについては前述のとおりです。

では、審判書があるけれども、審判書に“基づく”登記をするわけではない場合はどうでしょうか。

 

この場合とは、

・対象不動産を競売手続きにより換価することに決まった

・競売手続きの前提として、相続登記をおこなわなければならない

・この相続登記は法定相続分のとおりにおこなう

 

こんなときです。

審判書は必要でしょうか。もちろん、不要です。

法定相続分にておこなう相続登記ですので、被相続人の一連の戸籍や相続人の住民票を添付しておこなう一般的な登記手続きです。

 

そこで、今回とりあげている、「被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)」が取得できない」問題が浮上します。

代替書類を準備しないとならないのでしょうか。

それとも、裁判所通じた手続きを経ているので、代替書類はいらないのでしょうか。

 

必要最低限の書類だけを揃えて手続きを進めたい、みな共通の考えだと思います。

念の為、という言葉で、用意するよう求めることは簡単です。

しかしながら、必要ないものを求めて、依頼者に負担をかけるのは違うと思います。

とはいえ、後から「この書類も必要でした」は、いけてないですよね(なんのための専門家!?と思ってしまいますよね)。

管轄法務局により判断が分かれるような書類は、相当検討したにも関わらず、「この書類も必要でした」と後からお願いしなくてはならない、やむを得ないケースも稀にあり・・、ご理解いただけたら有り難い・・とも思っています。

 

この件は、相続人全員で上申書を作成するなんて無理!という事情を聞いていました。

そして、相続人の1人が登記申請をおこなうものでした。

 

・相続人の1人が登記申請をおこなえることが明らか

・登記手続きの本来の添付書類ではないけれども、裁判所の手続きを経て取得した審判書がある

・審判書があるということは、裁判所の手続きの中で、対象不動産が被相続人の遺産であることが確認されている

・審判書には「登記簿上の住所」がしっかりと記載されている

 

これらのことを鑑みて、申請人である相続人お一人が作成した上申書を添付することにしました。

 

「競売手続きの前提としての相続登記である」こと、「被相続人が登記記録上の所有者であることに間違いない」こと、「審判書とその確定証明書を添えて上申します」ということを記載し、認印で押印いただいた上申書です。

審判書を添付しなければならない登記手続きではないけれど、審判書を添付するのだから、審判書を添付する手続きと同様に扱ってくださいね、それであれば「被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)」もこの代替書類も必要ないはずです、という申し出です。

 

結果、これで登記は無事にとおりました。

(もちろん、全ての管轄法務局でとおるかはわかりませんが、この理屈で考えれば、大丈夫なのではないかな・・と思います。)

 

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