調停調書や審判書を提出しておこなう相続登記手続きにおいて、これまでに2回、法務局に「謄本」を提出しました。
そして、この2回とも、法務局から「正本を添付してください」という補正を求める電話がかかってきました。
結論、謄本で大丈夫です。法務局の担当者(登記官や調査官だと思います)の間違いです。
その理由は次のとおりですが、電話の返答では、「謄本で問題ないはずなので、もう一度確認してください」でよいように思います。
不動産登記令
(添付情報)
第七条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
1―4省略
5権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 省略
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2)以降省略
さて、「法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記」とはなんでしょうか。
不動産登記法
(判決による登記等)
第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
この条文の、ここです。
「申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記」です。
これは、相続登記にはあてはまりません。
同じ条文の2項のとおり、単独で申請することができる登記で、「申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる」はありえないことです。
相続登記における調停調書や審判書は、単なる「登記原因を証する情報」にすぎません。
一方で、この条文が規定している「判決による登記」は、本来は①登記権利者と②登記義務者が共同で申請しなければならないのに、一方(一般的なのは登記義務者)が協力しないために登記申請ができないときに、協力しない一方に対して「登記申請をする」という意思表示を擬制する(意思表示をしたことにみなす)ために裁判手続きを経て、確定判決を添付しておこなうもので、「意思表示の擬制」を証明するための添付書類です。
このように全く異なるのです。